YamaRan's: モンゴル旅行記:3日目 モンゴル旅日記

[ 2002.09.27.(金)- 3日目:ブルドへ ]

前日ほどではないが、まあ眠れた方だと思う。私が”理解されない前衛芸術家”になるというヘンな夢をみた。

車でウランバートルを出る。市の外れにある検問所を抜けると、周囲は枯れ草色一色といった感じ。デコボコの舗装道路を突っ走るのみ。途中、羊をぎっしりと荷台に載せた大きなトラックや、ほし草を積んだ小山の様な車とすれ違った。昨日自然史博物館でみたタルバガンがヨチヨチと道を横断していた。デールという民族衣装を着たおじさんが颯爽と馬にまたがって羊や牛、時にはヤク等を引き連れている様はなんとも言えずカッコイイ!
画像をクリックで拡大:昼食を食べた丘のふもとに転がっていた、動物の頭蓋骨。牛?馬?羊にしては大きいか?

気が付くと眠っていた。11時半ごろ、給油所でトイレ休憩。夏場は観光客相手のレストランをしているらしいが、この時期はすでに店じまい。仕方がないので物置小屋の陰の”天然トイレ”を利用(笑)。この日はとてもいいお天気で、車の中では暑いくらいだったが、外に出ると風が強く、少し寒い。

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給油所から進行方向を眺める。はたして柵は必要なのだろうか?

さらに1時間ほど行ったところで昼食。なだらかな丘のふもとで、遠くに山が見えるだけ。こんな所で1人取り残されたりしたら、それこそパニックだよな、などと考えながら、チキンの塩焼き、ごはん、トマトとキュウリのサラダ、ピクルス、フレンチフライなど、豪勢なお弁当を食べる。スニッカーズとベーコンサンドはお持ち帰り。
・・・蟻がでかい。そして素早い。「さぁ食べようか」と腰を下ろすと、もう足の上まで上って来ている。たくましいヤツ。

画像をクリックで拡大:車から少し離れた所に座っているのが我が妹。

再度出発。しばらくは新しそうな平らな舗装道路が続いた。中国の援助で出来た道らしい。しかしそれもすぐに終わり、というか工事の真っ最中で、そこから先は道なき道をガタゴトと進む。普段は昼寝なんか全くしないのに、モンゴルに来てからはすぐに眠ってしまう。標高が高くて空気が薄いからだろうか?妹も「眠い眠い」と言っていたので、私だけじゃない様だし。この時も凄まじく揺れる車の中でまた眠ってしまい、目が覚めたらもうツーリスト・キャンプに着いていた。バスなどの大型車だと7時間はかかるという道のりも、身軽な乗用車だと休憩を含めて5〜6時間で着いた。

荷物は2泊分だけまとめて来たので、2人でカバン1つ。これをゲルに運んでもらってひと休みする。ゲルというのは中国で言うところの「パオ」、遊牧民のテントのこと。組み立てもばらすのも、数人で1時間ほどで出来るというお手軽さだが、モンゴル特有の強風や寒さにも耐えられるというすぐれもの。壁は周囲をヒモできつく巻く事で安定するし、蛇腹になっているのでたたむと小さくなる。今でもゲルに住んでいる人は多く、ウランバートル周辺部や、郊外のベッドタウン・ナライハ市にもゲル集落がある。民主化後、遊牧生活が成り立たなくなって仕方なくゲルで定住、と言う人も多いそうだ。もちろん好きでゲルを選んでいる人もいる。
画像をクリックで拡大:一番手前はお土産やさんゲル。数時間後には解体されていた。背後に岩山が見える。

私たちのゲルはベッドが3つ。ガイドブックに載っていたのは、柱や家具に伝統的な雲の模様などがペイントされていたが、ここの装飾はシンプルで、天井の放射状の棒にすこし飾りがついている程度。入ってすぐのところに薪ストーブがあり、煙突が天窓から外にのびている。そしてストーブを囲むように、壁際にベッド。天窓の真下にはテーブル。それだけ。外はとてもいい天気だったので、室内が余計に薄暗く感じられた。円形の部屋のせいか、コンパクトさのせいか、なんとなく落ち着く。

当初の予定では、ブルド到着後に乗馬の時間があったのだが、馬係の人の子供が大ヤケドをして(煮えた油に手を突っ込んでしまったらしい!)近くの町の病院に出かけているため、明日に変更になった。近くの町と言っても車でデコボコ道を1時間近く(?)行かないといけない。大変だ。

夕食までの数時間があいたので、休憩してから、キャンプの北に見える岩山を目指して、とりあえず散歩。足元はなにか小動物の巣穴と思しき穴ぼこがあちこちにあいていた。穴から穴へと小さな足跡が続いている。時折どこからか「ブブブブブブ・・・」という羽音が聞こえるので、目をこらして見ると、バッタかイナゴの様な虫が、地面から1.5〜2m程の所を水平飛行中だった。あの手の虫はぴょんぴょん跳ねるものと思っていたので、長距離を飛ぶのは意外だった。片道20分ほどで岩山のふもとに着いた。途中、キオスクのレジ袋が落ちていたのは興醒め。
画像をクリックで全体を見る:私の影。

2人で登れそうな所まで行ってみる。岩にはところどころに、鮮やかな黄緑色をしたコケ(?)がついていた。私は下から3分の1あたりまででリタイア。妹は半分くらいまでよじ登って写真を撮っていた。ここまで来て怪我をしてもつまらないので、無理はせず、引き返す。行きは最短距離をまっすぐに来たので、なんとなく横にそれて、大回りして帰ってみたが、当然景色はさほど変わらず(笑)。結局往復で1時間半くらいかな?
画像をクリックで全体を見る:岩山から南側を眺める。ちなみに矢印部分がキャンプです(笑)。

もう観光シーズンもお終いで、私たちが今年最後の宿泊客だそうで、到着した時には余分なゲルを解体しているところだった。岩山から戻ってくると、残るはお土産などの売店用ゲルを解体するだけ、という状態だった。ガイドさんと一緒に作業を見学した。家族総出で作業をしている、といった感じで、3才くらいの子と、5才くらいの子が周りでちょろちょろ走り回っていた。ゲルの中に貼ってあったポスターを大事そうに抱えて、年長の方の子は妹がカメラを向けると、飛んだり跳ねたりしてポーズをとって、愛嬌満点、元気はつらつ!男の子だとばかり思っていたら、女の子だった(笑)。解体作業が終わると、お父さんに手を引かれて、それでもぴょんぴょんと飛び跳ねながら帰って行った。

この日は、私たちの他にもう一組の観光客がいた。日本人の若い女性2人組。私たちがゲルの解体を見たり、子供と遊んでいる間も、自分達のゲルの前に座って2人で話をするばかりで、おとなしい人たちだなぁ、と思っていた。しかしガイドさんの話を聞いてビックリ!彼女達は、我々が岩山に登っている間に乗馬から戻って来たらしいのだが、1人が落馬して意識を失っていたらしい!乗馬は初めてではないとかで、スピードを出していたところ、私たちもあちこちで目にした例の小動物の穴に馬が足を取られて、馬ごと転倒したという。恐い!ベッドの上で目を覚ました時、本人はなぜ自分が寝かされているのか分からなかったそうだ。病院に行かなくて大丈夫なんだろうか?

陽が傾いて来て、寒くなって来た。外にしつらえられた椅子に腰をかけて、が丸くなっているのを眺める。妹は夕日を撮影。チュッチュッ、というか、キュッキュッというような鳴き声がするので、よーく目を凝らすと、岩山へ行く途中にも見た、小動物の穴がキャンプの敷地内にも沢山あいていて、時々穴から穴へ、ねずみの様な薄茶色の動物が行ったり来たりしている。スナネズミとかいうやつだろうか?体長は10センチ〜15センチくらいだが、こいつのお陰で馬がひっくり返るんだからなあ。かわいらしいが迷惑なヤツだ。

「そろそろ夕食ですよ」というので、食堂ゲルへ行く。シーズン中なら3つのゲルを連結した大きなレストラン・ゲルで馬頭琴を聴きながら食事ができるそうだが、今はもう店じまいして、馬頭琴の演奏家も町へ帰ってしまったので、調理場兼食堂になっている1つのゲルで食事。客が4人では仕方がない。それに調理している所が見られて面白い。今夜のメニューはギョウザのように皮でお肉を包んだもの。小さい肉まん型に包んで茹でたものはボーズ、大きめのギョウザ型に包んで揚げたものはホショルという名前。これが美味しい!塩味のマトンと熱々の肉汁が・・・あーおいしかった(笑)。満足満足。もう一組のお客さん達も食事に来ていたが、落馬した本人は「気分が悪い」とほとんど口をつけずにゲルに戻っていた。大丈夫なんだろうか??

夕食を終えてゲルに戻ると、天窓から小鳥が侵入していた。それも5羽くらい(笑)。スズメに似ているが少し大きい感じ。ドアを開けてなんとか追い出したが、どうしても1羽だけ出てくれない。余分な毛布で仕切りをしてみたり、手で追い立てたりしたが全然効果なし。円形の壁にそってぐるぐる飛び回るばかりで、10分くらいはドタバタやっていたが、小鳥は次第に弱っている様だし、参ったなあ、と思っていたちょうどその時に、ガイドさんが「これからストーブ用の薪を持って来てもらいます。11時には自家発電も止まるので、ローソクも。」と連絡に来てくれた。「他になにかありますか?」と聞かれて、私「実は鳥が・・・」(笑)。運転手さんとキャンプの従業員さん、大の男2人がかりでさらに5分ちょっとはかかったかな(笑)。参った。
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キャンプから砂丘方面を眺める。
手前に見えるポールは照明。この後点灯。

一段落して歯を磨きに行った。シャワー、トイレ、洗面所はゲルとは別棟になっていて、共同で使うようになっている。シャワーは早々に閉鎖されていて使えなかった(給湯設備が止まっていたので、開いていたとしても使えない)。懐中電灯片手に行くと、たまたま例の2人組と一緒になった。明日ウランバートルへ行くんだけど、と、向こうの様子を尋ねられた。私は明日カラコルムへ行く、と言ったら「寒いけど景色がいいよ」とのこと。「落馬したと聞きましたけど、大丈夫ですか?」と尋ねてみたら、恥ずかしそうに「もう大丈夫」と言っていた。本当に大丈夫なんだろうか(笑)?

9時半ごろだったか、寒いが外に出て星を見た。妹はわざわざ三脚を持って来ていたので、ここぞとばかりに天体撮影開始。私は何をするでもなくぶらぶらしながら顔を上に向けてみてアラびっくり!星座が大きい!北斗七星ってあんなサイズだっけ?モンゴルは日本よりも標高が高い、すなわち空に近い。だから星座も近くに見える、と、そういう事らしい。これは予想していなかった。それだけでも来た甲斐があったんじゃないか。天体図みたいに空じゅうに星があって、天の川があって、プラネタリウムみたいな夜空だ。もちろんホンモノの空の方が比較にならない素晴らしさだが、これが東京と同じ夜空だろうか!と、空がつながっている事が疑わしくなった。

いいかげん体が冷えてきたのでゲルに入って寝ることにする。薪ストーブが入っているので暖かい。暑いくらいだ。ぱちぱちと薪がはぜる音がなんとも快適。念のために薪を少し足していると、パッパッと電気が点滅した。これから電源が落ちますよ、という合図だ。急いで懐中電灯を用意。すぐに自家発電停止。あぶないあぶない。ローソクに灯をつけて、ベッドに入る。犬がうろうろしている音を聞いている内に眠ってしまった。

4日目へ

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