YamaRan's: お伊勢参りの巻:03 お伊勢参りの巻

朝食は8時に頼んでおいた。身支度を整えて、夕食を食べた広間へ行ってみると、おっさんが寝ていた。というか、いま布団から出たばかり、という感じ。一同びっくりして「すいません!」と言ってふすまを閉めた。おっさんも朝っぱらから驚いたことだろう。るえことぽんつは昨晩の事もかなり頭に来ていた様子だったが、「やっぱりだよ、ここ」「今のおっさん、客っぽかったよね?」と更にイライラを募らせている。そういえば、食事時の旅館だというのに、人がいやに少ない。文句を言おうにも、旅館の人は一体どこにいるんだろう?「もうしばらく待ってみて、それでも用意が出来ていないようなら、朝食を食べずにここを出て、どこかよそで食べる事にしよう」と言ってはみたものの、みんな心の中ではよそで食べるつもりだったと思う。少なくとも私はそうだった。

8時半頃にまた様子を見に行ったが、やはり私たちの朝食はどこにもない。今度は調理場らしきところから物音が聞こえるので、るえこが暖簾をめくってみると、昨夜の夕食の時に給仕をしてくれた、私たちが密かに”ツワモノ”と呼んでいたおばあさんが、櫛形に切ったリンゴをつまみ食いしていた

私たちは朝食をとらずに宿を出た。

「あそこは普段からあの調子なんだろうか?」「調理係がスキーに行ってるので、手のこんだ料理が出せません、なんて言い訳にならないよね。だって飛び込みの客ならともかく、私たち事前に予約してたんだよ!」「晩ごはんの時に”すきま風が寒かったら、窓に新聞紙を噛ませるといいよ”って教えてくれたおじさん、なんか常連ぽかったよね?」「ビジネス客は割安の料金設定になってるみたいだからね。」「でもせっかくいい建物なんだからさ、もうちょっと手入れすれば、絶対人呼べると思うけど」「あそこの人、よその旅館とかに泊まった事ないのかな?あれでいいと思ってるのか?」「ビジネス・ホテルにしとけば良かったかなあ」「いや、泊まってみないとわかんないもんだからね、こういうのは。いい経験だよ(笑)。」

そんな事を話しながら私たちは伊勢市駅方面に向かい、途中にある観光ホテルのレストランで朝ごはんを食べた。今まで当然だと思っていたサービスが、とても嬉しく感じられた。旅館の支払い時に、ちゃんと食事代を引いてもらったので(当然)、支出は予算内でおさまったと思う。なぜか糖尿病と腎不全について話をしながら、落ち着いて食事が出来た。

ゆっくりとごはんを食べてから、駅に向かった。適当に歩いていたら近鉄伊勢市駅の方に出てしまい、すこし遠回りになったが、何ごともなくJR伊勢市駅に着いた。二見ヶ浦方面へ向かう電車までは少し時間があったので、コジャレた外見の駅前の本屋さんで時間をつぶす。コジャレすぎて開店しているのかどうか一見分からなかったが、ありがたいことに9時から開いていた。

JRで二見ヶ浦へ向かう。30〜40分ほどだが、少しウトウトしてしまった。ずっと「ふたみがうら」だと思っていたが、正式には「二見浦(ふたみうら)」らしい。駅名だけだろうか?少なくとも駅名は二見浦だ。二見浦と書いて「ふたみがうら」と読むわけでもない。新発見。

駅のコインロッカーにお土産などを預けて、出発。昨日に引き続き風が冷たかったが、陽は出ている。散歩するにはまあ悪くない天気だ。

日曜日なので観光客で賑わっているかと思いきや、二見浦の町はしんとしていた。旅館やホテルの集まる地区にさしかかっても、相変わらず静かだ。閉まっている土産物店も少なからずある。車の通りもまばら。何で?(ほぼ)全ての電柱に取り付けられた赤福の広告が、より一層脅迫/強迫的に感じられた。

犬に吠えられたり、「くうや餅」のお店をのぞいたりして、20分くらいで海岸に出た。やはり海からの風は強い。松が植えてあるが、並木程度なので防風はしてくれない。この辺りに来てようやく人が多くなって来た。きっと車で来る人が多いのだろう。皆二見興玉神社に向かっている。有名な夫婦岩も見えて来た。

ここに祀られている猿田彦さんのお使いがカエルだそうで、鳥居をくぐるとあちこちにカエルの像が。そしてびっくり、天の岩屋というのがあった!小さな鳥居等が設えてあるが、これじゃあ閉じこもるには小さすぎる。

・・・と思ったら、ここは天照大御神が閉じこもった「古事記」の天の岩戸とは違うらしい(まあ、そりゃそうなんだけど・笑)。二見興玉神社HPによると、「宇迦御魂大神を祭った三宮神社のご遺跡であり、 当神社が日の神拝所のご由縁によって世人は天の岩屋とよんでいる」とのこと。なるほど。

夫婦岩は想像よりも岸から近い所にあった。でも初日の出をここで見よう、という人の気持ちは何となく分かるような気がした。それからこの神社には輪注連縄(わしめなわ)というのがあって、これで体の悪い部分を撫でて奉納する。直径15cmくらいの輪っかになった細い注連縄だ。初めて見た。せっかくなので大枚200円也をはたいて健康祈願。

あんまり寒いので、お参りもそこそこに、近くにあったお土産センターに避難。暖まってから帰る。丁度お昼時分になり、お腹が空いてきた。予定より大分早く見終わったので、名古屋まで出て買い物でもしよう、ということになり、食事は向こうで食べるつもりで喫茶店で一服して、すぐに駅に向かった。が、電車は丁度出たばかり。次の電車は約1時間後。駅員さんに「すみませんねぇ、時間を確かめておいてもらえるとよかったんですけどねえ」と何度も謝られてしまった。こっちが申し訳なくなる程。

せっかくの空き時間なのでやっぱりここで食事することにした。「ロッカーから荷物出さなきゃ良かったなー」とぶつぶつ言いながら、食べる所を探す。と言っても、駅周辺だけではかなり限られている。私たちはとりあえず、電車の中からも看板が見えた「肉まんのウァン」という店に入った。これが美味しかった!基本的には持ち帰り用の中華まんやギョーザの店らしいが、ちゃんと店内でも食べられるようになっていて、焼きたて/蒸かしたてを出してくれる。肉まんは野菜がたっぷり入っていて、大きさの割にあっさり食べられたし、餃子はパリパリの皮の中身がすごくジューシーで「おまえは小籠包か!」と言いたくなる程。おすすめです。電車に間に合わなかったおかげで美味しいものが食べられた。ハッピー。

今度はちゃんと時間に間に合うように駅に着いた。さっきの駅員さんに再び謝られながら電車に乗った。

家に帰ってから食べたお土産も、どれもおいしかったし、楽しい旅だった。

伊勢リンク






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