「The List」誌より。
ヘッドライナー・BLURがT in the Parkを襲撃したのは4年前。
そして今年、再来襲の体勢が整った---ギタリスト、Graham Coxonがドアを開ける勇気を出しさえすればの話だが。
文・Fiona Shepherd

 Caffeine culture

 こんな場面を想像して欲しい。少々エキセントリックな国際的ポップ・スターが、スコットランドのジャーナリストと電話で話していると、突然、不可解にも彼は黙り込んでしまう。

ポップ・スター:(聞き取れない位の小声で)玄関に変なヤツがいる。
ジャーナリスト:(間をおいて)誰が来たのか見に行かないの?
ポップ・スター:(ささやく)わかんない。僕の知らないヤツだ。僕はドアに近付いてくる人に対して誇大妄想が激しいんだ。ちょっと待ってて。
ポップ・スターは玄関に出て、よくある感じの会話をする。
ポップ・スター:(電話に戻る)僕のリトグラフを受け取りに来たタクシーの運転手だった。悪賢そうな人だったしサングラスしてたから、本当に恐かったよ。郵便受けから発砲して、僕を殺そうと家に来たんじゃないかと思った。

 誰であろうと、この手の馬鹿げたパラノイアは野放しのエゴのせいだと解釈されるが、Graham Coxon - Melody Maker紙でロック界で最もクールな人に選ばれた事もある、Blurのだらしなくて謎めいたギタリスト - 彼の場合はむしろかわいらしく感じられる。恐ろしいほどの才能あるギタリストであり、最高のバック・ヴォーカリストであっても、彼が芝居がかった派手な振る舞いをする事は決してない。そのかわり、しぶしぶのスター稼業では、彼自身が、スポットライトのその先の段階に備えていなければならないのだ。

 偉大なる「Tender」の後をどう続けるか、Blurの面々と議論を重ね、最終的には、賢明にも、アルバムのベスト・ソングを選んだ。「Coffee & TV」では、Coxonは心安らぐリード・ヴォーカルと、彼の得意分野であるスリーヴ・デザイナー役を担当している。

「この曲の最初のヴァージョンでは、カムデンの事を歌ってたんだ。」とCoxonは語る。「2番目のヴァージョンは、違う色のTシャツを着てるとか、そういう事で、叩かれたり罵られたりするイングランドって国について。」

 Coxonが時おり彼自身に当てはまると感じる問題 - 社会への不適応も語られている。

 「平原の真ん中の小さな小屋に住んで、ただ絵を描いたり、マイク付きのMDプレーヤーで曲を録音したりして暮らせたらな、と思う事があるよ。」と彼は言う。「僕たちは10年も活動してきた。底なしの穴に落ちていくみたいなものだよ。そんなデタラメな10年が経って、なんで自分はここにいるんだろう?って考えようとする。いい付き合いをすることも出来るって気が付く。おかかえ運転手付でドライブしたり、ファーストクラスで旅行したり、ちょっと賭けに負けてみたりするのに慣れた完璧なフリークスじゃないって事に気付く。現実の世界にいるんだってね。だから僕は堅実で、ポジティヴな若者でいるように努力してる・・・まあ、そんなには若くないけど。

 今年始め、Coxonは30才になった。彼にとってそれはどんな事なのだろう?

 「2週間くらい狂ってた。」と彼は認める。「すごく腹が立って飲み過ぎたんだ。でも今はまた禁酒してるし、気分も少しはマシになったよ。ツアーに出てる時はいいんだけど、家にいるとね。前回アメリカとカナダを回った後は、アタマの中のパーティしたい部分をすっかり追っ払った。」

 Blurから離れた時間を取る事も、個々のメンバーのためになる。マンモス級ツアーは予定から外されて、ソロ・プロジェクトが加わった。Damon Albarnは英国製ギャング映画「フェイス」に出演し、Dave Rowntreeは操縦士の資格を取得(訳注・Daveは以前からパイロットの資格を持っているので、これはたぶん、最近資格をとったらしいAlexの間違いだと思われます)、Alex JamesはKeith AllenとDamien Hirstと共にFat Lesを結成してイングランドの新しいワールド・カップ・ソング「Vindaloo」を録音した。そしてCoxonは取り留めのなく不安げなソロ・アルバム「The Sky Is Too High.」をリリースした。

 「僕たちはみんな、それぞれがやってきた事に対してねじれた敬意を持ってる。」と彼は言う。「“Ravenous”のサントラでのDamonの仕事は本当に素晴らしいよ。彼は彼自身のRay Davies熱を超えたね、ホント。彼も僕のアルバムの中の2、3曲は気に入ってくれてると思うよ。Alexの・・・プロジェクトに対してはみんな称賛の念を抱いてるんじゃないかな。Daveはコンピュータでコツコツとクレイジーな事をやってる。この間ウチに来て、システムのバックアップの仕方を教えてくれたよ。」

 Blurタワーでは全てがグルーヴィな様だ。


| blur page |
inserted by FC2 system