97年3月10日(月曜日)付 朝日新聞・夕刊より
実験精神あふれる新作
  英トップバンド ブラー  
 イギリスの新世代を代表するロックバンド、ブラーが新作アルバム「ブラー」の宣伝のため来日した。アイドル的な支持も集めるバンドだが、新作では従来のポップな持ち味から、サウンドを一新し話題を呼んでいる。5月に5度目の来日公演も控えたに聞いた。
 

ブリットポップ一新/5月来日音楽で勝負

 ブラーは1989年に結成された4人組。英国のロック、ポップスの歴史をふまえながら現代風に再構成するセンス、ひねったユーモア感覚などが受け、トップバンドに成長した。そのスタイルは同時期にデビューしたオアシスなどと共に「ブリットポップ(英国風ポップ)」と呼ばれ、同様のバンドを多数生み出し、大ブームとなった。

  しかし、タイトルにバンド名を掲げた今回の新作では、そうしたイメージを振り切るような実験精神にあふれている。

  「確かに前作までのような明るさやユーモアは減った。意識的に変化を求めたというより、自分の中にあったモヤモヤをぶつけた結果なんだ」とデーモンは言う。

  今作では、オルターナティブロックなど、米国音楽からの影響も指摘されるが、本人も「表面的なサウンドより、自由な発想を基本に、自分の気持ちに忠実な音楽を作るという姿勢には感化されたかもね」と認める。

  「だいたい今の英国の音楽マスコミは、どのテレビに出たとか、どこそこで酔っ払っていたとかいう話題ばかり。もっと音楽そのもので勝負したい、という気持ちになったんだ」
 

「人間的に成長したと思う。最近やっと自分はミュージシャンになれたと感じる」というブラーのデーモン・アルバーン(左)とグレアム・コクソン=東京・赤坂で

  デーモンはかつて「ブリットポップは死んだ」と公言し、物議をかもしたこともある。「人のまねをするだけの怠慢なバンドと一緒にされるのはうんざり」と笑う。

  ファンにとっても賛否の分かれそうなアルバムだが、グレアムは「完璧な作品を作っちゃいけない。まだまだぼくたちには次があるし、これからも変化していく存在だ」と話した。

  来日ツアーは5月25日の仙台公演を皮切りに、東京、大阪、名古屋、福岡を巡演する予定。


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